１０月２６日

チリの首都，サンチャゴから車で２時間弱，海岸のリゾート地，マルベーリャへ行く。

ゴルフ場を囲む開発地の一画に，オーチョ・アル・クーボと名付けられた，チリの有名建築家と海外から招待された建築家の設計による住宅が計画されて，現在，その半数が建ち並んでいる。

去年の暮れ，ここを訪れた時に工事現場であった伊東豊雄氏によるヴィッラが完成，今回撮影した。

コンクリートによるシンプルな建物は，そのコンセプトを明快に見せているが，チリ人の協力建築家の色が所々に出ていていつもの伊東さんの建物とはすこし趣の違うものになっている。

この計画を主導するデベロッパーのゴッドロイさんの話を聞く。彼の建築に対する情熱に感心した。

今後，ここに妹島さんのものを含めあと７棟の住宅が建つとのこと。楽しみである。


１０月２７日

マルベーリャから程近い海岸沿いの敷地に建つ週末住宅の撮影。

マティアス・クロッツの新作である。マティアスとはこの10年程の付き合いであるが，昨今，いよいよチリでもっとも有名な建築家といった活躍ぶりである。

そういったことも手伝ってか，彼の作品は，ラディカルでシャープなデザインから随分と落ち着きを纏った「大人」の建築に変わってきている。

今回撮影の週末住宅もそんな彼の「現在」の作品。

敷地とプログラムの条件に最適化した無理のない建築であり，しかもマティアスの作品であることが一目瞭然である、彼独特のデザイン・ヴォキャブラリーによる。

太平洋に向かって突き出されたテラスは，この絶景を取り込み，ここで週末を過ごす主人の時間を豊かなものにしている。

（二川由夫）