2009年6月21日





6月21日(日)


朝7時にサンマルコ広場から安藤さんの美術館「プンタ・デラ・ドガーナ」を眺めている。

サンマルコ広場の向かい側、ヴェネツィアでは最高のロケーションである。15世紀から17世紀にかけてつくられた、もともとは海の税関だった建物を改修し美術館としてこの6月オープンした。

パリでルノーの工場跡に計画されたピノー美術館が中止になったが、そのヴェネツィア版である。

建築の出来がどうのこうのと云ったことより、日本人がこの仕事をしたことこそ、最大のニュースであると思われる。

最近の安藤さんの仕事はこの手のものが多く、この美術館も安藤さんでないと出来ない仕事の系列に入るだろう。

外観は歴史的な建物であるゆえ、ほとんど新しいデザインは施されておらず、開口部に填められたスカルパ調のスティール格子が目を惹くのみである。

美術館内部は良く出来ており、大小の展示スペースは、現代と古典とが上手く絡み合って、安藤さんが今まで数多くの美術館を手がけてきたことが実証されている。

特に彼の得意のコンクリート打ち放しの技術が、伝統ある古典建築の中でいやみなく成立しているのは、安藤さんの力であると思う。

古典の大空間が、現代の材料であるコンクリートによって囲まれている姿は安心感を与えるし、現代を象徴するに相応しいデザインである。

古典的な木の小屋組、レンガの柱、伝統ある石造の組み合わせに対して、安藤のコンクリートは古典材料に匹敵する質を持っている。

この美しさは安藤マジックの一つだが、おそらく今日までつくられた現代建築のコンクリートの中で一番優雅で品格がある。

(二川幸夫)




GA JAPAN 95
PLOT
安藤忠雄
プンタ・デラ・ドガーナ
再生計画
phase1
歴史に向かい合うプロセス

TADAO ANDO DETAIL 04







GA ARCHITECT 16